INTRODUCTION
「稲垣足穂文学 初の映画化!」
謎の映画『彌勒 MIROKU』は、稲垣足穂(1900~1977)の小説「彌勒(みろく)」が原作になっています。稲垣足穂の小説は今まで何人もが映画化しようと試みましたが、原作のもつ創造性の強烈さ、哲学性の深さ故に映画化は不可能とされ、原作権を守っているご遺族も、その映画化を許しませんでした。林海象は少年の頃から稲垣足穂を愛読し、映画監督になってからも「彌勒」の映画化を夢み、独自に脚本を書き続けてきました。それから二十数年、足穂のご遺族と会う機会があり、そこで長い話しあいのうえ、映画化の許しを受けました。しかし、その後も映画化は実現されることなく十数年が経ちました。そんな時、北白川派映画芸術運動の一作として創る機会が突如到来しました。
「90人のメインスタッフは全員学生!」
この映画は今までの映画のように、プロの映画スタッフだけで製作されたのではなく、林海象と京都造形芸術大学・映画学科の90人の学生たちによって創られました。この映画には、学生たちがもつ純粋な光が宿っています。プロはその学生たちを優しくサポートする存在でした。
「出演者は、無名な学生と有名俳優!」
出演者は、「第一部 少年編」では、土村芳、大西礼芳、土居志央梨、水本佳奈子、中里宏美など、映画学科の女優たちが夢みる少年役を演じ、「第二部 青年編」では、永瀬正敏さん、井浦新さん、佐野史郎さんなど、プロの俳優たちが、夢のなれの果ての登場人物たちを演じています。
また、林海象と永瀬正敏の「私立探偵 濱マイク」コンビが17年ぶりに本格的にタッグを組んだ作品でもあります。
「『彌勒 MIROKU』には2つのバージョンが存在する?」
この映画には、映画に音楽が入っている「映画版」と、映画に音楽が入っていない「生演奏版」の2つが存在し、全国巡業では、天才音楽家 渡邊崇率いる「Sound on Film」の音楽家たちによる生演奏で上映されます。それは映画上映というより、コンサートに近い興行になると思います。
また、全国巡業と連動しながら、映画館での通常興行も行っていきます。映画館では音楽入りの「映画版」が上映されます。
どうか2つの『彌勒 MIROKU』をお楽しみください。
「公開は東京からではなく、なぜ京都から?」
公開は、2013年7月に、この映画が撮られた京都からスタートします。
通常の映画公開は東京を皮切りに、その後全国公開していきますが、この映画はあえてそのルールを破ってみようと思っています。この映画を生んだ京都から公開を始め、まず私たちの手の届くエリアから公開を続けていきます。私たちはとても挑戦的な映画興行を試みます。さあ、どうなりますか?
「映画館+映画巡廻興行」
私たちは、映画館で観客をお待ちするだけでなく、観客のいる場所に映画をお届けいたします。映画が誕生した頃は、映画は観客のもとに届けられていました。映画は製作者の手によって運ばれ、日本全国津々浦々で上映されていました。
私たちは、その映画が誕生した時代に、映画を戻そうと考えています。私たちは映画を持って全国ドサ廻り巡業に出かけます。映画新世紀のために。
「林海象からのメッセージ」
映画が誕生して120年が経ちました。いま映画は誕生の1世紀を終了し、次なる映画新世紀を迎えます。
映画は死にません。映画は今まさに誕生しようとしているのです。
謎の映画『彌勒 MIROKU』は、その映画新世紀に産声をあげた映画です。
たくさんの方々に、この新しい映画を体験していただければ幸いです。
映画監督 林海象
Profile 林海象
1986年、モノクロ・ 無声映画『夢みるように眠りたい』で映画監督デビュー。国内外でグランプリ受賞。その他『二十世紀少年読本』(1989)、『アジアン・ビート』(1991)など。永瀬正敏の人気を決定づけた『我が人生最悪の時』『遥かな時代の階段を』『罠』の『私立探偵濱マイク』シリーズを生み、探偵ブームを巻き起こした。また、映画、ネットシネマ、コミック、とメディアを超えて展開する新しいタイプの探偵シリーズ『探偵事務所5』プロジェクトを監修。2010年、『大阪ラブ&ソウル-この国で生きること』(NHKドラマ・平成22年度文化庁芸術祭参加作品)の脚本を手がけ、 同作が「放送人グランプリ2011」のグランプリを受賞した。